東野圭吾(2)
まだ「白夜行」と「幻夜」を含めて4作品しか読んでいないのですが、少なくてもそれらに
共通して云える事は、『切ない』ですね。僕は、本来『切ない』フィクションってのが苦手
と云うか好きじゃなくて、その理由としては、現実の方が『切なさ』に満ちていると考えて
いるからなのですが、東野圭吾の場合、精緻な表現の積み重ねがリアリティを醸しだし、
そこから生まれてくるものが、必然性をもって切なくなっているんじゃないかと思います。
その切なさ故に、時々読み進めるのが息苦しくなって、栞を挟んだりするのですが、やはり
その話の先を読みたくなるのです(笑)
最初に読んだ「卒業」は、その人物描写に才を感じました。トリックである雪月花に関して
は、そのギミックに余り興味を抱かなかったので無視したのですが、ああ成る程、この人は
理系だな、と。
続いて読んだ「手紙」も傑作だと思いますが、あの作品は「犯罪加害者の家族が受ける被差別
を真正面から描く」というテーマばかりが評価されすぎていると思います。
僕は、あの作品を読みながら、著者が何を考えながら書いているか?ばかりが気になりました。
丁寧な心理描写を重ねながら、確固たるプロットをもった推理小説のような手法であると。
様々な角度から考え方を実証する為に書かれた確信的な小説に感じたのです。
でも、うまくまとめていますね。情緒的に巧く。
意地悪な書き方をすれば、僕もレノンは好きですが「イマジン」って曲は、どうとでも
解釈出来る曲で、ディランの「Blowin' in the Wind」と同様に、答えがない曲です。
こういう小説の小道具としては便利なものです。そういうことを僕より4歳年上の著者が
自覚していない筈がないと思えます。けど、その象徴的な用い方だけに頼っている訳じゃ
ないですし、むしろ僕には「どうしようもないもんは、どうしようもないんだよ」と、
著者が丁寧に積み上げたものを、自虐的に壊してるカタルシスのように響きます。
僕は無知だから、「手紙」はもっと昔に書かれていたと思っていたのですが、「白夜行」の
数年後なのですね。「白夜行」を書き上げた作家なら、余裕で「手紙」は仕上げたことと
思います。それぐらい僕はこの作品を評価しています。スピリチュアルな面でも、手法面
でも、エンターテイメントな商品としても。
そう、僕は「白夜行」と「幻夜」について、書きたかったんだけど(苦笑)
長くなったので、次回に持ち越します。