capriccio

「よし。これで、よしっと。さぁ、岩さん、なんだい言ってみな？」
「てんで勝手がわからねぇや。まあ、いいか。
　今日はそんなセコイ話じゃないんで。例の山田宏巳が捕まったって話で」
「あぁあぁ、あの話かい。現行犯じゃ仕方ないねぇ。所持してたって話だ」
「いや、あっしもね、一報を聞いた時にはクスリかなんかだと思ったんですがね。
　大麻だっていうじゃないですかい。」
「こらこら、滅多なことを云うんじゃないよ。大麻だって立派な犯罪だよ。」
「へい。そりゃあ解ってるん。でもねあっしは山田宏巳にゃ何の縁もないし、ヒロだって
　行った事がねぇから庇うわけじゃないけど、そんなに悪い事なんですかね。」
「バカなこと言っちゃいけないよ。悪いに決まってるじゃないか。」
「いや、あっしはね、あんなことでポールが捕まったことをまだ根に持ってるもんで。
　ポールと云ってもポール牧じゃないですよ。マッカートニー。」
「解ってるよ。でも法は法。守らなくちゃいけないことは、あるんだからね。」
「そうですがね。井上陽水だって上田正樹だって捕まってるし。いっそ解禁にでもすりゃ。」
「確かに昔のレゲェフェスとかじゃやってる素人も多かったけどね。でも、いけない。」
「そうなんでしょうな。仕方ないやね。でも、あっしも機会がありゃやってみたいな」
「滅相もないこと云うんじゃないよ。社会悪としては流通ルートの問題もあるしね」
「ああ、悪い人達の資金源になるってことですかね」
「まあね。少なくともそんなもん捌いて儲けようって人に善人はいない」
「『リストランテ・ヒロ』もこれから大変でしょうな。店を閉めますかね」
「さあね。社長で総料理長だからね。それにしても店にまで持ち込むことはないと思うがね」
「ねぇ、ご隠居、やっぱ取り調べは厳しいんでしょうね？」
「そりゃそうだろ。だから、バカなことは考えるのは止した方が身の為だよ」
「入手ルートとか追及されるんでしょうね。包み隠さず吐きますかね？」
「いや、山田シェフだけにシチリアの岩塩かパイ皮で包むだろう」
・・・・・おあとがよろしいようで。
テケ、テンテンテンテン♪