理由
理由 (著)宮部みゆき
読了しました。
本書の内容に抵触(ネタばれ)しますので、折り畳んでおきます。
また、個人的及び主観的な感想なので、気分を害される方もおられるかと思います。
ご了承の上、自己責任でお願いします。
これが僕にとって宮部みゆき作品の2作目です。
最初に、こっちから読めば良かったな(笑)
少なくとも彼女の筆力には信頼をおいて、「名もなき毒」を読むことが出来た筈です。
それぐらい、この作品における精緻さと筆力は凄いです。
僕は、このような小説においてプロットの確かさに重きを置くところがありますが、
プロットが確固たるものであることは、この長編の序盤において既に明確になります。
本当にプロットが秀逸であり、それにこの筆力が加われば、これだけの作品になると
いうことです。傑作といえば傑作。満場一致で直木賞ってのも頷けます。
でも、僕は昨今の直木賞に権威なぞ感じてないし、ここに直木賞の限界も感じます。
ドキュメンタリータッチで淡々と書かれた本作品からは、精緻さや筆力を感じる事が
出来ますが、作者の熱は伝わって来ません。いや、リアルに書こう、精密に書こう、
これでどうだ!みたいな熱意が冗漫さを伴って伝わって来ますが。
登場人物について描き込まれている必然性は感じますが、だからどうなんだと云うのが
僕の感想です。大きな事件が起こるとメディアがこぞって取り上げる「識者の意見」と
同様の空々しさを、僕はこの作品から感じます。
ただ、何度も書くように、圧倒的な筆力を筆者が持っているのは明白なので、この作品
を、『現代社会が抱える家族というものを描ききった」とか評価する向きも多いかとは
思います。それは、それで、いいんじゃないかな。僕の趣味じゃないだけで。
要するに、僕には合わないと云う事だけです。次に宮部作品を読む時は、ファンタジー
にしてみよう(笑)