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2007年11月17日

うたかた/サンクチュアリ

うたかた/サンクチュアリ (角川文庫)
「うたかた/サンクチュアリ」(著) 吉本ばなな(角川文庫)
読了しました。
第39回芸術選奨文部大臣新人賞受賞作品。
「だから何?」って云うよりも、どんな賞かは知らないけれど、並んだ漢字の文字面から察して、
なるほどなぁと思います。
では、本書の内容に抵触(ネタばれ)しますので、折り畳んでおきます。
また、個人的及び主観的な感想なので、気分を害される方もおられるかと思います。
ご了承の上、自己責任でお願いします。

芸術選奨文部大臣新人賞なんてのは、山田詠美とかだともらえないんだろうなと思いつつ、
ネット検索してみたら、平成15年に放送部門で宮藤官九郎が受賞していたので笑いました。
肝心の本の内容ですが「うたかた」「サンクチュアリ」という二編の恋愛小説が収まっています。
よしもとばななの作品は、時代を問わず女子中学生・女子高生には受けるでしょうね。
ここまで数作品を読んで、改めてそう感じました。
主人公は大抵の場合、複雑でメチャクチャな環境に置かれているのに、アピール力はなくとも
芯の強い自分をしっかりと持った生き方をしている女性。健気にさえ映るくらいに。
そして恋愛対象は兄妹か姉弟か精神的にアンブラッド・ブラザーズと思えるような関係から。
常に「死」が隣り合わせであることによって、主人公の「生」の瞬間が煌めいても見えるし、
したたかにも映ります。
そういう設定を氏の瑞々しい感性で描いているのだから受けない筈がないってくらいで(笑)
しかも、いつもそうですが、この作品では特に本当に最低な人間や、救いようのない人間が
登場せずに、そういう罵倒やスプラッタ的なものや、生理的嫌悪感を抱くような表現は
存在しません。これって読み手にとっては大きく、短編だったりすると感銘を受けた女性などは
何度も安心して読み返すことが出来るんですよね。
とにかく、そういう作品だと思います。
ただ、この二編はドロドロする筈の部分も案外ドライで、それ故かどうかは解りませんが、
単なる恋愛小説色が強まっています。計算でそうなったと言うような狡猾なことではなく、
多分作者がそういう気分の時に一気に書き上げたのではないかと思います。
故に本人にしたら、なかったことにしたい作品かもしれませんが、これはこれで秀逸です(笑)