名もなき毒
名もなき毒[宮部みゆき]
読了しました。
本書の内容に抵触(ネタばれ)しますので、折り畳んでおきます。
また、個人的及び主観的な感想なので、気分を害される方もおられるかと思います。
ご了承の上、自己責任でお願いします。
宮部みゆきの作品を初めて読むのが、この作品ってのは、いかがなものでしょう?
正直「失敗したなぁ」と思っています(笑)
酷評したいのですが、この作品しか知らずに、それはいかにも乱暴でしょう。
ただ、宮部みゆきというビッグネームを取り外し、名もなき、ひとつの小説として客観的に
捉えても、残念な部分が多い作品であると思います。
解り易い部分としては、主人公の杉村三郎が、お節介ゆえに事件に巻き込まれていきます。
積極的にでも探究心があるわけでもなく、あくまで巻き込まれていきます(笑)
これは、著者がそういう手法で描きたかったんでしょうから、仕方がないのですが、
余りにも手続き導入部が多く、しかも毒に対する取材知識を詰め込んだ結果、えらく散漫な
ものになっています。現在の社会問題として実在する毒と、昔から人間が内に有する毒を
掛け合わして表現するといった、単純な作業に、べらぼうな枚数が費やされています。
退屈な内容を読み進める内に、もしかしたら著者は本当に答えに辿り着いてないんじゃないか
と、心配になってきました。まぁ、その心配は杞憂に終わり、気が付けば本の帯にも書かれて
いたんですけどね(苦笑)
どこにいたって、怖いものや汚いものには遭遇する。
完全に遮断することはできん。
それが生きるということだ。
でも、幻冬舎も大概ないいかげんさで、本の帯には「それが生きることだ」になっています。
それは違うよ。と云いたい(笑)僕は、校正ミスとかに目くじらを立てることはないですが、
これは、愛情なき編集者の為せる業で、こんな出版社には見切りをつけるべきかと。
僕は「毒なんて死と同じでどこにでも存在するんだよ」と思いながら、読み進めていたので、
この台詞が出てきた時点で、やっとかよー!と深い溜め息が出ました。
でも、不思議な事にラストの20頁ぐらいは、良い小説になってます。宮部みゆき作品が
売れ続けている理由を垣間見た気がします。後付に「最終章を書き下ろした」とありますが、
その部分は本当に素晴らしいと思います。
不運にも毒に触れ、それに蝕まれてしまうとき以外、私たちはいつも、
この世の毒のこと考えないようにして生きている。
日々を安らかに過ごすには、それしかほかに術がないから。
この、ごく単純な結末まで489ページ。
魅力的な善人も英雄も悪漢も出て来ない(笑)
原田いずみなんて、論外。
まず、ラジオ体操から教えた方がいいんじゃないかな?(笑)
毒に関しては、あまり書きたくないんだけど、僕にとっての毒はもっと異質なものです。
お嬢ちゃんには、別世界の。ねぇ、リリー?(笑)