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2007年08月12日

使命と魂のリミット

使命と魂のリミット
使命と魂のリミット(著)東野圭吾
読了しました。
本書の内容に抵触(ネタばれ)しますので、折り畳んでおきます。
個人的及び主観的な感想なので、気分を害される方もおられるかと思います。
ご了承の上、自己責任でお願いします。

医学サスペンスと云う重いテーマの割りには、テンポよく読めます。
はっきり云って面白いです。
まぁ粗筋だけを追うような読み方をされる方には、TVの90分ドラマと大差ないでしょうし、
それほど深い構成でもありませんから、東野圭吾の作品にしては評価が落ちるかもしれません。
実際、いつかこの作品は映像化されるんじゃないでしょうか?しかもTVで。
で、また下らない作品が出来るんだろうなぁ(苦笑)
僕はこの作品を大いに評価していますが、映像化したってダメだって。
それはよくある原作を映像化するとつまらない作品しか出来ない。ってだけでなく、氏の作品は
ビジュアルを想起させますが、それは文学における効果であるだけで、それをそのまんま映像に
しても何ら意味を持たないんだって(笑)

東野圭吾が抱える問題ってのは、初期の作品から完成度が高いってことでしょうね。
いや、そんなもんがマイナス要素になるはずもないのですが、やろうと思えば初期のスキル
だけで、質の悪くない作品を量産出来るはずです。
けど、僕は氏の作品を多く読んでる訳じゃないけど、まだ同じ手法のみで書かれたものに
出会っていません。いつも何かが違うのです。明らかに東野圭吾なんだけど、やり方が常に
違う。これは凄い事です。
今回も「主人公の夕紀サイド」「犯人の譲治サイド」「警察の七尾サイド」と三種の側面が
交差して進んでいくってのは別にいつもの方法なのですが、スピード感というかテンポの
良さに重きを置いてる意識が伝わってくる書き方です。これは週刊誌連載であることにも
関係するんでしょうが。あと、この3サイドがそれぞれ「使命」という命題を抱えて展開して
行くわけです。これがこの作品の氏の想いを重ねる部分かと思います。
全体を通して、うまく纏めたなって思いより、また進化しちゃったなって感じですね。
そもそも「AとBのC」って表現はどんなの連想します?
やっぱ「愛と青春の旅立ち」ですかね?(爆)僕は村上龍の「愛と幻想のファシズム」ですが、
こんなタイトルつけた時点で気合が窺えます。
他にそんな例を思い出せないけどいっぱいあるような・・・。
今作品はもしかすると彼なりの使命感によって完成されているのかもしれません。
大げさに言えばレゾンデートル。でも、そんな命題を重苦しくやらない辺りが彼のセンスでは
ないかと僕は思います。とにかく、面白かったです。
この本をくださったJさんに改めて御礼を。ありがとうございました。