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2004年07月25日

小林賢太郎プロデュース公演#4「レンズ」

大阪千秋楽を観てきました。結論から先に書くと、観に行って良かったです。
本当におもしろかったです。
そして何より、小林賢太郎の志の高さを認識しました。
KKP好きです。小林賢太郎、「サイコーでーす!」(笑)
僕は、とても正統的なラーメンズ・ファンではありません。KKPですら、#1を未だ観たことがありません。
なら、演劇フリークかと云えば、そうでもない。今回も久ヶ沢徹が出演してたから観に行った要素が強いです。
しかし、久ヶ沢がいようがいまいが関係ない結論ですね。誰が何と言おうと、小林賢太郎は偉い。
以下、ネタばれ&不快感を伴うかもしれないので、ご注意下さい。
また、一貫して敬称を省略させていただきますが、不遜な気持ちは一切ございませんので、ご了承ください。

まず、今回は小林賢太郎がちゃんと出演していたのが勝因だと思いますね。良くも悪くも彼の場合、自分の演りたい事は自分で演った方が早いのです。きっと。過去の作品では、プロデューサ(以下P)として、作・演出としてあれだけ緻密な事をやっておきながら。役者に対する遠慮を感じました。
彼の場合、あて書きであることは間違いないと思います。
しかも自分の脚本にエゴイスティックにならず、役者の魅力と能力を引き出そうと云う優しさまで感じます。しかし、それが足枷になってたのも否めないのではないでしょうか。結果、不完全燃焼の印象。ちと、遠慮し過ぎ。ちと、優しすぎ。Pとしては未熟。エゴを押し付け、自分の世界で役者を躍らせるのが、Pだと僕は思ってました。
でも、それが小林賢太郎のやり方。
小林賢太郎プロデュースだから、異をはさむ余地はありません。僕は今までのやり方でも支持します。
僕が盲信的な信者だからでは、ありません。小林賢太郎に興味があるから。
でも今回は違いました。セルフ・プロデュースで、場も仕切る。
おいしいトコ、全部持ってく。それでいいのだ。
自分が最良の理解者なんだから。自分がやった方が早いのだ。僕は、そう思います。
これにより、事態は随分良くなったのではないでしょうか。
そうなると片桐仁が舞台上にいた方が、事態はもっと好転すると思うのだけど。
やっぱり、KKP公演は小林賢太郎が主役を張るべきだと感じます。
そして、僕が一等評価したいのは、今回も期待通りに楽しませてくれたことです。
ラーメンズの本公演はビデオで観ても質が高いと思いますが、あれは演劇ではありません。
色々な形での短距離ダッシュを積み重ねて出来上がるものだと思います。
演劇であのテンションを保つのは、不可能に近いです。
けど、小林賢太郎は決して逃げてはいない。エンターテイメント、一本で勝負してます。
奇しくも久ヶ沢徹は、以前TVで、
「ああ、なんだか解らないけど、楽しかったからいいや」
と云ってもらえたら、それでいい。と、そんな感じの事を云いました。
僕にとってのエンターテイメントの定義もそのようなものです。
何も全てハッピーエンドで大団円で終わらせろと云っている訳ではないです。
「ああ、楽しかった」と劇場を出たいだけです。僕が基準を甘くして云ってる訳でもありません。
台詞が人生を変える程の力を持ったり、魂に延々と訴える演劇は、他にどこにでも選択肢があります。
辛くて悲しいことや、悲惨な内容の選択肢もあります。
それらが悪いとは思わないし、芸術作品として高い評価を得るかもしれません。
でも、小林賢太郎がやることではないように思えます。
小林賢太郎も、あからさまに泣かせようとか感動させようとかしません。
笑わせて、楽しませて、ハイ終わり。の中で勝負してます。不器用なまでに実直に喜劇にこだわっています。
もちろん、他のことでも手を抜いているわけでなく、何から何まで芸が細かいです。
細かい部分は、また別の機会に書きたいと思います。
回を重ねて、何とか完成度の高いものに出来ないか模索しているようにも思えます。
僕は、彼がKKPでやってる事は、脚本で感動させたりするより尊いことだと感じています。
同時に、かなり困難な作業であるとも思います。
たしかに、あのようなやり方だと、ストーリー的に弱くなるのは否めないのです。
話自体は、本当におもしろいのに、結末は「なんだかな?」になってしまいます(笑)。
今までのKKPは、それ故に不当に低い評価を受けているような気がします(笑)。
大多数の意見がそうなら、僕が何を云っても仕方がないのですが。
要するに価値観の違いかもしれません。僕は、小林賢太郎の志が高いと思うのは、その辺りですから。
成る程、KKPは「ああ、楽しかった」と云ってもらえる消耗品であり、そういう商品なのかもしれません。
なら、僕は、それを支持します。
僕にとって、消耗品って言葉は、価値観を下げる言葉ではないです。
僕にとって、価値あるエンターテイメントは、全て消耗品だったかもしれません。
そして、それを気付かせてくれた、小林賢太郎に感謝してます。
冒頭に「久ヶ沢徹がいようがいまいが関係ない」と書きましたが、久ヶ沢徹は幸せだと思います。
僕はKKPに連続出演している久ヶ沢徹を誇りに思います。多分、彼もそう思ってることと思います。
最後に天城茎太郎は「蟻」同様、天賦の才に自覚がないって話だけど、小林賢太郎は自分の才能に自覚的なんだろうか?
カーテンコールのいつもどおりのオドオドぶりを見てると、彼も「蟻」同様、自覚が無い様に思えるのだけれど(笑)

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コメント

IWAさんの感想と考察、とても興味深く拝読致しました。「ああ、楽しかった」、私もそれが全てだと思います。

まりおさん、ありがと。僕の感想なんて、他の方々と違って吐き出してるだけだからね(^^;でも、本当におもしろかったです(^^)

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