哀悼、倉森勝利
公式サイトや拙サイトで既報の通り、
サモ・アリナンズの作・演出家である倉森勝利氏が、
残念ながら急逝されました。
謹んで哀悼の意を表し、ご冥福をお祈りします。
常々、死はどういう形で訪れても理不尽で不条理なもの
と思っていましたが、今回も本当に残念で仕方がないです。
しかし、それを事実として受け容れる必要もあります。
今回「AB男」を観て書き残したことを僕の弔意として
書き留めておこうと思います。
例によってネタばれのため畳んでおきます。
「AB男」には、いるはずの倉森さんがいなかった。
それはそれで、観客として冷静に受け止めるつもりでは、あった。
けど、逆に舞台の上の人たちの意気込みがすごかった。
何としても、楽しませてやるぜ!って感じが伝わってきた。
途中降板、戦線離脱とはいえ、脚本も出来上がっている。
この人たちにとって、倉森さんの存在は想像以上にでかいなと感じた。
だから、まさかこのような結末を迎えようとは思わなかったけれど、
僕はあれからずっと倉森さんのことを考えてたのだ。
解るはずが無いほど、すげぇ人なんだけど(笑
サモアリと云えば、先日も書いた通り、大仰なストーリー設定と大人気のなさ。
ショッカーとか、死ね死ね団並み(笑)それを大人が・・・。
けど、何故かそれだけではない。
設定は、「笑い」を取るためのきっかけであって、なんでもいい筈だ。
これも以前書いたけど、深読みする必要も感じない。
だけど、「AB男」に限らず、登場人物の多くは哀しみを抱えているのだ。
常に何かに固執続けるとか、その存在の儚さとか、現実世界に置き換えると
哀しみを抱えた人達なのだ。
物事てぇものは、嬉しい前には決まって、誰が云ってもおかしくない言葉だが、志ん生師匠の言葉。
心配事や悲しいことがあるんです。
心配事や悲しいことから、嬉しいことが
生れてくるもんですな。
倉森さんの書かれた人物は、その存在の哀しさから笑いを繰り出してくる。
今回も勝手に改造された媒染も哀しければ、マキへの愛を抱くアキラも哀しい。
母の愛情を得られないタケちゃんやエリも哀しいし、女帝マキは、数十年間も
AB男に愛を貫き通して、あの結末。
せつなく、哀しい。しかもフォローはなく、放ったまんま(笑
僕は、これこそが倉森勝利の過激なセンチメンタリズムだと思うのだ。
救いようのない話は救いようがないんだよという、せつなさ。
爆笑の後に残る、あっけない幕切れ。
大団円で終わらせようとすれば、簡単に出来たはずだ。
けど、いつだって、それをしなかったように思える。
倉森さん自身も、残念な幕切れになってしまったな。
本当は万雷の拍手の中でカーテンコールを受けるべき存在なのに。
けど、過激なセンチメンタリズムは、安息の時を迎えた。
どうぞ、安らかに。改めて、ご冥福をお祈りします。
コメント
倉森さんの弔報をたどって、このブログを見つけました。
『AB男』を観ていないんです。
メンバー全員、頑張ってらしたんですね。
倉森さんの作品について丹念に書かれている文章
だったので、トラッシュバックしました。
ご冥福をお祈りします。
Posted by: とよちゅん | 2005年05月06日 20:42
はじめまして。トラバ、ありがとうございます。
ただ、つらつらと思うがままに綴ってるブログですが、
よろしくお願いします。
『AB男』は、みなさん本当に頑張ってました。
小松さんと久ヶ沢クンが鬼気迫るのは仕方ないとして、
その他の方が抜群に頑張っていました。
天に届くといいですね。
Posted by: IWA | 2005年05月07日 00:28
お久しぶりです。
恥ずかしながら、サモアリの公演も観たことがないし倉森さんのこともあまり存じ上げません。
しかし、IWAさんをはじめとするサモアリを愛する人々のblogを読んで、読んで、読みふけって、何とも言いようのない思いが沸き起こってきました。
倉森さん。
ご冥福をお祈りいたします。
そして、いつかきっと、サモアリ公演を観に行きます。
Posted by: SEIYA | 2005年05月07日 04:18
SEIYAさん、ありがと。
サモアリが受け容れられるかどうかは解らないけど、
本当にいい人達ですよ。ファンを含めてね。
Posted by: IWA | 2005年05月07日 13:54